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じゃわじゃわ旅行記
火車汽車臺北郊游 Taipei Excursion by Trains and Buses

地図

臺北中正國際機場
Taipei Chiang Kai-shek International Airport


豪雨の九份へ
Rainy Day in Jioufen


快晴の日月潭へ
Sunny Day in Sun Moon Lake


#本文中、華語(主に地名)に対して、ローマ字とカナを振っていますが、表記の方針は以下のとおりです。
(1)ローマ字表記は、現地でより多く目に付いた表記(標識、時刻表等)に依ります。このため、ウェード式/通用拼音/漢語拼音が混用されている場合があります。
(2)カナ表記は、筆者の脳内の中国語(大陸で言う普通話)でなるべく近いと思う書き方で勝手に振っています。このため、慣用的な表記と異なる場合があります。


臺北中正國際機場 Taipei Chiang Kai-shek International Airport

 今回は久しぶりに海外へ出るぞー。と言いながら、成田から3時間で着く、極東アジアの範囲内なのですが。都内のびゅうプラザにお願いして、台北3泊4日、完全フリーのスケルトンツアー、ホテルは安いので、という条件で、パックを探してもらいました。結果見つかったのが、往復はキャセイ指定、ホテルはエコノミーグレードで、一人部屋追加代金・空港使用料・燃油サーチャージ(最近はそういうのが代金に上乗せされるとのこと)などなど加算しても、合計で50,550円なりよ。なんて激安! NOEスカイツアーの販売しているパック。ビューカードでお買い上げ。

CX451 ──キャセイ・パシフィック航空(CX)の成田~台北便というのは、成田~香港線の経由便で、1日1往復しかない。時間帯は、往路:午後発、復路:午前発になるのだが、これはどちらかというと穴場なのではないかと。

 というわけで、2005年11月22日、前回の香港以来久しぶりの成田空港へ。台北経由香港行きCX451便は、15時40分発、「ON TIME」(定刻)とのこと。前回も香港行きのキャセイ・パシフィック航空で、第1ターミナルの同じようなゲートで待ったような覚えがある。──大韓航空(KE)の2便ロサンゼルス行き(栄光のシングルナンバー便、おそらくソウル発成田経由北米行きなのでしょう)が、キム・キョンイルさまが来ないらしくて何度も何度も韓国語で呼び出していた。そのうちに「キム・キョンヨルさま」と言い直し始めたので、イルとヨルを読み間違えるか?おいおい、とか思ったりしているうちに、周囲が日本人ツアー客でごった返し始めた。

 今回は、ぼくは荷物はリュックサック一個のみ。空港のターンテーブルがうっとうしくて仕方ないので、荷物は極力預けたくない。帰りはおみやげ関係で荷物が増えるだろうから、ナイロンのバッグを丸めて持ってきてはいるが、たった数日間の旅行で、下着の替えを持って行くくらいで(一人旅で着飾ってもしょうがない、という貧乏旅行者体質^^;)、持って行くほどのものは特にない、という状態。

* * *

 キャセイ・パシフィック航空こと國泰航空公司。前回に乗ったときはよい印象だったのですが、今回は日本人のアテンダントの女性がちょっときつい物言いをする人で、折に触れてカチンカチンとしたり。機内食も、「フィッシュ・オア・チキン?」と訊ねられたので「チキン」と答えたのに出てきたのは魚のほうだった。エコノミーのツアー客なんてどうでもいいんだろうな。。。しかしこれを間違えたのは香港人のものすごくかわいい人だったので、まあいいか、と(笑)。

 台北着陸時は少し風があったようで、ちょっと揺れてびくびくしたが無事着陸。着陸と同時にものすごい勢いで制動をかけるが、ほんの一瞬だがぴたりと止まったので驚いた。中正國際機場(Chiang Kai-shek International Airport)、すでに薄暮の様子。──滑走路はほのかに濡れていて、雨が上がったところらしい。雨か…。冬の台北は雨が多いというのは承知してはいるけれど、残念。明日からは晴れてくれることを願う。

 到着ゲートに向かう。ターンテーブルに用がないというのは実にラクで、これからは極力こうしよう、と思った。入国審査では、よりによってパスポートの中华人民共和国の深圳の出境スタンプと重なりそうな勢いで同じページに入国スタンプを押されたのでちょっとおおっと思ったけれど、そんなことべつに気にしちゃいないのだろうな。とは言えここは中華民國。大陸とは違う国ですから。──飛行機の中で、隣に座っていた女子大生の2人組が、「台湾って、中国じゃないの?」などと話していたのが、実はものすごく歯がゆかった(^^;。

#台湾が中国なのかそうじゃないのかと言うと、おわかりのとおり、まあ難しい問題があって、「中国大陸とは違う制度のもとに違う政府がある」としか言いようがない。それにしても一般の日本人のそのへんに対する無知って、ちょっとひどいものがあるよね、とぼくは思うことがある。

台北中正国際空港 ターンテーブルに寄らなかったので、ものすごく早く到着ロビーに出て来られた。出迎えの人たちが鵜の目鷹の目でこちらを見ている。とりあえず臺灣銀行の窓口で、2万円分のトラヴェラーズ・チェックを台湾元に替える。5,379元になった。NT$1=JP¥3.7ですね。

 ホテルまで送迎の現地旅行社の人のところに集まらなければならないわけだが、NOEスカイツアーの旗なりステッカーなりを持っている人が見当たらなかったので、たいして広くない到着ロビーをふらふらしながら、自動販売機で缶コーヒーを買ったり外に出て煙草を吸ったり公衆電話から自宅に国際電話をかけたりしていた。そのうち日本人ツアー客が出てきて集まり始めたので、それっぽいところに行って、名簿を持っている人に「スカイツアー?」と声をかけてみると、当たり。しかしもうちょっと目印みたいなものを持ってくれたほうがいいのでは。。。

 なんかキャンペーンをしているらしく「くじ引きしてきてください」と言われた。到着ロビーの奥のほうでやっていて、日本人が列をなしているが、面倒くさいのでやらない。

 現地旅行社の人は4~5人だが、見たところ無慮百人以上の日本人が群がっている。ホテルの方面別に別れてバスに乗せるらしいが、どうも見ていると、NOEスカイツアーとHISをまとめて請け負っているようで(なんかJTBという声も聞こえたような気がした)、ものすごい大声で名前を呼びまくっている。大変だよこりゃ。くじ引きをしに行ったまま帰ってこない人もいる。

* * *

大型バス やっと大型バスに乗せられて、空港を出発。この時点で飛行機がついてから1時間以上過ぎていたが、パック旅行を買った以上、こういうのはもう致し方ない。バスの車内で、ガイドの若い男性(張さん)は、あのCX451便だけで全部で140名のお客様を当社で世話してます、とのこと。なんともはや。バスは、市内の方面別にいくつかのホテルを回って客を落としていく、という感じで、車内で改めて客の点呼を取っていた。もし違うホテルの方が紛れ込んでしまっていたら、途中でタクシーを手配しますので、ということらしかった。結果的に大丈夫だったのだが、現地旅行会社もおつかれさまだ。

 大騒ぎの日本人ツアー客を乗せたバスは、中山高速公路を臺北市内の方向に向かったが、途中の五股というところでいったん一般道に降りて、首都高のような高架の自動車専用道を東へ向かった。──淡水河を渡って、まず着いたのが、ぼくの泊まる「一樂園大飯店(Paradise Hotel)」だった。

 ひとまず部屋におさまる。ツインルームを一人で使える、一人旅の醍醐味(爆)。──とりあえず軽く食事をしに出た。外は小雨模様である。

食事 ホテルの前は西寧南路(Xining South Rd.)という道で、二車線だが南向きの一方通行。適当な小吃店に入って、魯肉飯と蛋花湯で60元(222円)だったかな? 一日を締めくくる夕食としては少ないと思われそうだが、少食体質なのでこの程度で。その代わり、コンビニでお菓子とか飲み物を買って帰る。ホテルのすぐそばの四つ角は、四つの角のうち三つまでがコンビニ(セブンイレブン、莱爾富(ハイライフ)、OK便利店(サークルK))。もう何を考えているのか、と(^^;。さすが台湾、コンビニ天国である。

* * *

コンビニATM本日のコーヒー日本で見たこともないのに、ついまじまじと見ちゃう
台湾のコンビニATM。これはセブンイレブンにあった、中國信託商業銀行(Chinatrust Commercial Bank)のもの。コンビニ系列ごとに提携してる銀行が違うようだった。本日のコーヒー(?)。“緯來日本台”というチャンネルで、日本のドラマを流していた。これは『愛美大作戰』(=OLヴィジュアル系)。このあと、『沉睡的森林』が始まった。


豪雨の九份へ Rainy Day in Jioufen
臺北→瑞芳→九份→基隆→臺北

 翌朝、起きてみるとやはり雨。──前夜、天気予報はどうなのかしらと思って、ホテルのフロントと、「新聞ないんですか?」「没有」「天気予報見たかったんだけど、明日も雨ですかね?」「應該下雨(たぶん降るよ)」などと話していたのだが、やはり降っている。というか昨日よりも激しく降っている。セブンイレブンで60元のビニール傘を買った。

 台北滞在は正味まる二日間なので、一日は日月潭に行き、一日は九份(Jioufen/チォウフェン)に行こうと思っていたのだが、どっちに先に行くかは決めていなかった。日月潭のほうが移動距離が長いので晴れてるほうがいいな、と思い、雨はおそらく明日には止むだろうとふんで、今日のところは九份に行くことに決定。

 ホテルから30分弱くらい歩いて、臺北車站(Taipei Main Station)へ。ホテルの最寄り駅は地下鉄(MRT/捷運)の西門(Ximen/シーメン)駅で、ここから臺北車站まで一駅、地下鉄を使ってもいいのだが、ホテルから西門駅まで歩いて7~8分かかるし、臺北車站の地下街を歩いたり上ったりするのも面倒だ。

台北駅の切符売り場。列車の発車時刻が、パタパタ式の案内板で表示されています。昔の小田急新宿駅みたいで懐かしかった。 臺北車站の地平階の切符売り場で、8時38分発の『自强號』の切符を買う。瑞芳(Rueifang)まで80元(296円)。──余談だが、この旅行中、カタコトの華語(北京語)と英語をしゃべってしのいでいたのだけど、もう口をついて出てくる言葉が華語と英語がグチャグチャで、この窓口では「ネクスト・トレイン、タオ・ズェイファン」とか無茶苦茶なことを口走ってしまい、駅員さんの失笑を買ってしまった。(^^; 昔、中国語を5年間も勉強していたはずの人間としてはほんと、ズダボロである。

台北駅
臺北車站(台北駅)。線路は地下にもぐっているので、駅舎の建物があるだけです。

台北駅前
そしてその駅前。なんとなく札幌の駅前に感じが似てないかな?

台北駅ホーム
ホームは地下にあるので、、、ただの地下鉄の駅みたいに見えますが…。

* * *

Taipei-Rueifang 臺灣鐵路管理局(台鉄)の列車は、早いほうから「自强號(ツーチァンハオ)」「莒光號(チュィクァンハオ)」「復興號(フーシンハオ)」があり、普通列車にあたるのは「電車(ティエンチョー)」というらしい。「自强號」は日本で言えば在来線特急という感じでしょうか。臺北車站8時38分発の自强號は、西部幹線の員林(Yuanlin/ユェンリン)が始発で、東部幹線の花蓮(Hualien/ホァリェン)行き。しかし、ぼくが乗るのは臺北から瑞芳までのほんの30分程度。

写真撮ろうとしたら行っちゃった… 臺北車站を出てしばらく地下を走り、松山(Sungshan/ソンシャン)で地上に出るとどしゃ降りの雨になっている。車窓風景は意外と山が迫っており、基隆河という川沿いの谷間に国道と線路が走っている。自强號は“特急”だと思っているのだが、意外とのろのろと進む。

 9時17分、瑞芳で下車。地下道を通って駅の正面(南側)の広場に出ると、もう笑っちゃうしかないくらいのどしゃ降りであった。九份へはここからバスに乗る。港町の基隆から、九份・金瓜石といった山間の町を結ぶ路線バスが、この瑞芳を通るらしいのである。

瑞芳駅前 韓国でもそうであったが、ここ台湾でも、バス停に時刻表はついていない。こういったアジア的路線バスを現地の人たちがどう使いこなしているのか、いまだにわからないのだが、まあ、『地球の歩き方』によれば頻発しているらしいし逆方向のバスも見かけたので、商店の軒先で雨を避けながらしばらく待つと、「往九份」(九份行き)の札を出した路線バスがやって来た。日本と同じようなワンマン運転のバスで先払いだった。運転士に「九份までいくら?」と訊くと「アルスー(二十)」と言うので、20元を運賃箱に入れる。しかし他の乗客は無言でそれぞれの金額を入れていたが。。。均一運賃ではないはずなので、日本なら整理券なり何なりの仕組みを導入するところだけれど、ほとんど信用乗車に近い感じになっているようだった。

 バスは瑞芳の町を出ると、基隆河の濁流に少し沿ってから、山肌を巻きながらグングンと登った。10時少し前、「九份舊道」というバス停で下車(バス停の名前なんて車内には何の案内もないので、そのへんは事前に地図とガイドブックで予習していくしかない)。坂の町・九份の入り口である。

 土砂降りの九份をそぞろ歩き。思わず観光客相手の茶芸館なんかにも入っちゃったわ、一人で(笑)。

中国茶飲んでます ガイドブックにも載ってるようなところ。300元もして、高かったけど…

#でもぼくは思うのだが、日本で日常的に飲む煎茶というのは結構がぶがぶ飲むものであるのに対し、中国茶というのはいちいち小さなおちょこみたいなのに注がなければならなかったりして、どうも勝手が違うし、茶葉も茶器も日本のものとは違うため、日本の茶器では中国茶は飲みにくいし、中国茶器を買って帰っても日本のお茶には使えないと思ったほうがいい。──などなどあって、中国茶好きなわけでもないので、中国語圏に行っても茶葉や茶器を買って帰るのはやめとこうと思っている。嗜好品は難しいよね。

Jioufen Jioufen

Jioufen 珍しい蝶
海が見えるはずなのだが、天気が悪すぎてどうしようもない。

Jioufen Jioufen
レトロの反面、寂れた町ではある。

* * *

 12時40分頃の路線バスに乗って、基隆へ向かった。――台湾は統一地方選挙が近いらしく、縣長、市・鎮・郷長、議会議員などの候補者の幟や横断幕が道路沿いを埋め尽くしている。「懇請郷親全力支持」とか「改變基隆唯一希望 劉文雄」とかいう幟が次々と現れる。決められた掲示板にしかポスターを貼れない日本とは、だいぶお国柄が違う。

選挙運動中
これは翌日に南投縣内で見た選挙の宣伝

 50分ばかりかけて、基隆(Keelung/チーロン)の港の前に着いた。鉄道の基隆駅も近い。沖縄の那覇から船で上陸することもできる、台湾の海の玄関口である。

Jilong
基隆の港。画像つなげたので線が見えますが…

路線バス
基隆客運の路線バスで、港の真ん前に着きました。

基隆夜市 基隆は夜市でも有名。歩いていくと、廟の近くの路地に食べ物屋の屋台がずらりと並んでいて、午後まだ明るい時間だがさかんに始まっているようだった。しかし相変わらず雨がひどく、とくにおなかがすいているわけでもなかったので、なんとなく素通り。

 その代わり、こじゃれた喫茶店に入った。ふつうのコーヒーを飲もうと思ったのだが、カウンターのメニューを見上げると“愛爾蘭咖啡(Irish Coffee)”なんてのがあった。珍しい。ウィスキーベースのコーヒーカクテルのようなもので、雨に打たれて震えていた身体に暖かく、おいしい。これ、日本でももっと一般的なメニューになればいいのにな。

基隆駅 韓国DAEWOO製の「電車」

Keelung-Taipei 基隆発16時30分の電車で、台北へ戻る。43元(159円)。切符は日本の電車のものと同じようなサイズで、裏が黒くて自動改札対応。都市圏では導入されているらしい。

 基隆~台北間は約45分。大都市間の鉄道路線、もっと投資してスピードアップすれば乗客も増えるだろうに…もったいない…と一人で歯噛みする(^^;。本当に乗客が少ないし、電車も遅いのだ。

* * *

 いったんホテルに戻ってから、お土産を買わなくちゃね、と外に出る。西門の地元資本百貨店に入ってみたが、食料品売り場とかがない。思いあぐねて、臺北車站の前の新光三越百貨まで行った。困ったときの日系デパート頼みである。適当にお菓子の箱などを買って、タクシーでホテルに戻り、さらに食事をしに出たりCD屋さんに行ったりした。西門町あたりもさすがに、夜10時を過ぎると、少なくともまともなお店は閉まり始めるようだ。

バリスタコーヒー
本日のコーヒー。



快晴の日月潭へ Sunny Day in Sun Moon Lake
臺北→日月潭→水里→臺中→臺北

 三日目。ホテルの部屋のカーテンを開けると、すっきりよい天気だった。西門駅からMRT板南線に乗って、忠孝復興(Zhongxiao Fuxing/チョンシァオ・フーシン)で下車。通勤ラッシュの時間帯だったが、東京の比ではなく、京都か札幌くらいだ。

 今日は日月潭(Sun Moon Lake/ズィーユェタン)に足を伸ばそうと思っている。日月潭とは、台湾の中部の山の方にある、台湾最大の湖で、その昔は先住民の住むところとして有名だったらしい。今では風光明媚な観光・リゾート地だが、台北からだと高速バスで4時間くらいかかる場所であり、台北から日帰りしたという話はあまり聞かない。

 台北から日月潭への高速バスは、『歩き方』などの一般的なガイドブックによると、国営バス会社の流れをくむ國光客運(クォクァン・クーユィン)というバス会社が、台鉄の臺北車站の隣にある長距離バスターミナルから、一日四本運行しているとのこと(ものの本によると一日二本と書いてあるものもあり、最近増えたのかも)。ぼくもこのバスターミナルに行ってみたが、日月潭まで465元との掲示があった。

 ──しかし、事前にネットを渉猟していたところ、豐榮客運(フォンロン・クーユィン)という会社が最近になって台北~日月潭の高速バスに参入し、片道400元で一時間に一本走っているらしい。これは見逃せない。

 その豐榮客運の日月潭行きが出るのが、忠孝復興だというのでやって来たのだった。この会社は日月潭近辺の地元のバス会社らしく、台北行き路線に参入するにあたって、比較的新しく発展している忠孝復興に営業所を設け、市内南部の公館地区(臺灣大学がある)や、郊外の新店市などを通る新しい経路で路線を設定したらしい。このへんの機微は日本の高速バスと事情が似ている。

* * *

 MRTの忠孝復興站は、東西に延びる忠孝東路と南北に延びる復興北路・復興南路との交差点に位置する。それぞれ、地下の板南線、高架の木柵線という電車が走っていて、繁華な乗り換え駅になっている。地上に出て少しうろうろしたら、緑色の看板で“埔里・日月潭”と出ているのが見つかった。豐榮客運の営業所だ。営業所自体はごく狭く、カウンターと、奥に数人分の待合室があるだけだった。

忠孝復興の交差点。高架はMRT木柵線 豐榮客運の営業所

#豐榮客運の埔里、魚池郷、日月潭行きの営業所は、MRT忠孝復興駅下車、地上の交差点で、南西側の角(復興南路より西側の、忠孝東路の南側)に出て、忠孝東路を西に歩いてすぐのところにあります。緑の看板が目印。(2005年11月24日)

 時刻は8時15分頃。カウンターにいたおばさんから、9時ちょうど発の便の切符を買った。相変わらずぼくのインチキ華語は通じにくくて苦労したが、まあ切符くらいはなんとかなった。ぼくが煙草を吸っていたので、おばさんに「ここは禁煙だよアンタ」と怒られたが、これは100パーセントぼくが悪い(^^;。

 バスは営業所のすぐ前の路上から出るという。ひとまずコンビニで食料や新聞を買い込み、ぶらぶら散歩してから戻ると、緑色の大型バスが歩道に横付けされていた。「九點開車的?(9時発車のだよね?)」と運転士に確認して、乗り込む。革張りの大きな座席が横3列で並ぶ、まずまずの長距離仕様のバスだ。

「Green Transit」というペイントが 車内

 携帯でずっと話しているビジネスマン風のおっさん、中年女性の二人組、など、ぼくとあわせて合計5人くらいの乗客を乗せて、発車した。これで一時間に一本走らせてるんなら、絶対近いうちに縮小されるな…。

樹林收費站 公館や新店でも乗客はなく、バスは第二高速公路に乗って快走し始めた。高速は片側二~三車線あって、広々としている。長距離路線バスの巨大なダブルデッカー車がよく目につく。だいたい時速110キロくらいは出ている。

 ──右の画像は、台北の郊外の樹林というところにあった料金所で、東名高速風?に言うと「樹林バリア」だが、台湾の高速道路というのはインターチェンジ(交流道)の出入口には料金所がなく、一定の距離ごとに本線料金所があってそのたびに料金を払う、という仕組みらしい。中正空港から台北市内に来るときなどそれでものすごい混雑になるのだが。

* * *

高鐵、できてる 11時頃、台中龍井インター付近。新幹線(高鐵)の高架が広野を貫く。シャッターチャンスを逃したが、新台中駅(高鐵臺中站)も真新しい銀色の姿を現していた。高鐵の開業は来年秋とのことだが、──しかし、地図に描かれている高鐵の駅って、どこも市街地から遠く離れてるのが気になる。こんなんで使い物になるのか?

 台中からさらに東南へ向かう高速道路に入り、幹線国道へと続く。景色がはっきりと変わってきた。

車窓
檳榔樹?

すごいバス
すごいバスが追い抜いていった

 道路沿いには、檳榔売りのボックスが点々と並んでいる。しかし台北市内で見るようなしみったれた風情ではなく、ガラス張りのボックスにカラフルな看板など、派手な感じ。そしてだんだん看板がピンクっぽくなってきて、丸文字フォントで“咪咪檳榔”などと書いてあるに至っては、これはちと怪しい──華語の“咪咪(ミーミー)”はたしか“おっぱい”の意味だよな…。そしてついに、水着のおねいさんが現れた。──うわ~、“檳榔西施”って初めて見た。。。地方には今でもいるんだなあ。水着や下着(?)のおねいさんが、ボックスに座って檳榔の実を剥いたりなんかやってるのだ。お色気商売である。

#檳榔、檳榔西施については、ビンロウ - Wikipedia日本語版や、Betel nut Beauty - Wikipedia英語版を参照ください。臺北市と桃園縣では露出過多は禁止らしいぞ~。しかし、檳榔自体が我々日本人にはよくわからない品物なのに、それを売るためにさらにこんなことになっているというのは、ほんと、摩訶不思議な文化である。──さすがに走るバスの窓からは写真撮れなかったので残念。(?)

* * *

 12時20分頃、埔里(Puli/プーリー)という地方都市(紹興酒の醸造で有名)に入っておばさん二人組を下ろし、さらに山を上っていく。途中、ガソリンスタンドに寄ってやおらホースで洗車を始めたりしたが(15分間くらいそれで食ったが、ガソリンスタンドの女の子がかわいかった^^)、そんなのも含めて臺北市忠孝復興の営業所を出てから4時間くらい、ついに木々の間に湖水が見えた。エメラルドグリーンの深い色が美しい。バスは集落の道端に着いて、下車。13時頃だった。

日月潭 旅館街
陽射しは強いが、湖水を渡る風はすがすがしい。/日月潭の旅館街。

リゾート地 観光船
湖畔のリゾートホテル。/中華風の観光船。このあと、遠足の小学生が大挙押し掛けて大騒ぎになった。

* * *

 しばらく湖畔をぶらぶら散歩してから、タクシーの溜りを目指す。──今日は最終的には台北市に帰るわけだが、さっきの豐榮客運のバスに乗れば安直に帰れてしまうものの、それはさすがに面白くない。

 ここ日月潭から南に山を下ると、水里という町がある。そこには集集線というローカル線が通っていて、列車で臺中に出ることができる。臺中まで出れば、臺北までは特急自强號で2時間余りだ。

 しかし日月潭から水里までが難物で、埔里と水里を結ぶ路線バスが一時間に一本程度走っているらしいのだが、前述の通りバス停には時刻が書いてないし、そんなバスを途中の停留所で捕まえるのは、ちとぼくの手には余る。それにこのまま水里に直行するのもつまらない。文武廟などの観光名所が湖畔には点在しており、ひとつくらいは巡りたい。

 …などと思いながら、タクシー溜りに近付く。と言っても運転手たちはほとんどおらず、おばちゃんが一人いた。タクシーの客引きらしい。話しかけてみると、「一周1,200元」と言う。これは日月潭一周の観光タクシーの協定統一料金であり、ガイドブックにも書いてあったし看板も出ていたから知っている。──湖をぐるっと回ってもらってから水里に行ってほしいのだ、と言うと、一周の1,200元、水里まで700元(これも協定価格)、あわせて1,900元だね、とのこと。明快である。

 しかしこのとき、財布のなかの台湾元はそれほど潤沢ではなかった。水里から臺中、さらに臺北までの列車代と、食事もしなきゃいけないし、それでカツカツになっちゃうのも危機管理的によろしくない。また実際、水里の列車の時刻があるのでそれほどのんびりと観光するつもりもなかった。

 「1,900元だよ、さあ乗った乗った」という感じで、おばちゃんはぼくを車に乗せようとするが、──ちょっと待った、悪いけどそんなにお金ないのよ。

あの塔まで ぼくは彼方に見える塔を指差し、──ここから、まず慈恩塔に行ってくれ。景色を見たい。そのあと水里まで行ってくれ。水里駅16時47分のこの列車に乗りたい(時刻表を見せながら)。それでいくらになる?

 おばちゃんが「イーチエンウー(1,500)」と言うのを「イーチエンアル(1,200)」に値切り、交渉成立。

 1,200元、日本円にして4,440円。まあ今にして思うと、協定料金が決められてるところに、走行距離的には日月潭を約一周に加えて水里まで行かせちゃったわけで、悪いような気もする。──しかしこのおばちゃん、車に乗ってみたら、ダッシュボードに掲示されているタクシーの乗務員証は、男性のものであった(最初、おばちゃんは客引きでどこかで旦那が出て来るのかと思ったが、最後までおばちゃんがハンドルを握った)。旦那が何かで仕事できない間のアルバイトなのだろうか。いずれにしても正規の営業ではないことは確かだよな。

* * *

 そんなわけで、湖畔の道路をおばちゃんのタクシーでドライヴ。山間の道路の感じ、右側通行であることを除けば日本の白樺湖あたりと大差ない。

 慈恩塔(ツーエンター)は、かいつまんで説明すると、蒋介石総統が、母親を亡くして悲しくて建てた塔である(?)。小高い山のふもとに車を停めて、参道の階段を上っていく。途中、明らかに地元台湾人の家族なのに老人に対してだけなんと日本語で「よかったねー」などと話しかけている一家とすれ違った。台湾の日本語世代、日本の戦前世代、どちらも消えていこうとしている世代である。

森の中をのぼってゆく これってハイビスカス?自生してました

慈恩塔 蒋閣下の御親筆ですよ

 塔の中はがらんどうで階段がぐるぐると巻かれているだけ。頂上に鐘があった。塔の上からの日月潭の眺めは素晴らしく、涼しい風を浴びながらしばらくぼんやりとしていた。

慈恩塔 慈恩塔より

 下りると、おばちゃんが新聞を読みながら待っていた。時刻は15時半。水里へ出発。

* * *

 水里(Shueili/シュェイリー)の町に入り、駅前で下ろしてもらった。立派な駅舎だったが人影はなかった。窓口で、臺中まで113元(418円)の切符を買う。──切符に「通勤電車」って大きく書いてあるのが面白い。列車の種類のつもりなのだろうが…。鉄道って、日本みたいな日常的な乗り物では必ずしもなかったりするんだよね。長距離を行くのがメインで、短距離のは通勤用の特殊な列車、という考え方だったりする。韓国にも「トングンヨルチャ(通勤列車)」っていうのがあったらしいし。

水里駅 静かな改札口 Shueili-Taichung

水里駅前の風景。こうして改めて見ると、タクシー多いなあ。ほとんど動いてなかったけど。 列車の時間まで小一時間余ったので、自助餐の店のベンチで軽く食べて、ぼんやりと町を眺めていた。今日はこんな時間の流れかたをするのが嬉しい。仕事をしているとこんなことは望むべくもない。

* * *

 臺中行きのディーゼルカーがやって来た。三両編成で、そこそこの乗客が乗っており、途中駅からは大きなカメラを首から下げた観光客ふうの人たちも乗ってきて、結構繁盛してるみたい。──車両の銘板を見ると“NIPPON SHARYO 1998”。日本製だよ。

 てれってってっててーれれー、てーれー♪

 「世界の車窓から」、今日は集集線をお送りします。

水里駅 水里駅
 水里駅を発車します。

集集線 集集線
 こんなところを走ります。

濁水駅
 濁水(Jhuoshuei/ジュオシュェイ)駅に着きました。

 かぶりつきをしているうちに結構混んできたので、客席に戻る。

* * *

集集線の柴油快客(ディーゼルカー)、二水駅に到着 すっかり暗くなり、西部幹線の二水(Ershuei/アルシュェイ)に着いた。車掌は何か大声でよばわりなから車内を歩き、乗客もほとんどみんな降りてしまった。見ると車掌は弁当を食べ始めている。

 この列車は本線に直通する臺中行きなのだが、本線の列車を先に出すのかな、隣に停まっている列車は“斗六”行きになってるけど斗六ってたしかここから南の方の駅だったよな…、と思いながらホームに降りた。地下道を通って駅舎側のホームに渡ってみたら、発車案内標に17時36発“三義”行きの列車が表示されている。ここから北に行くと臺中の手前で路線が二つに分かれるはずなのだが、三義というのがどっち側の路線の駅なのかわからず、駅員に「これは臺中に行くか?」と尋ねたところ、行くとのこと。暗いホームで列車を待つ。

二水駅
なんかぼくが海外に行くと、しばしば夜のホームで列車を待つことになるなあ。

 17時36分発の三義行き電車は、“準點”(定刻)と言っていたわりには数分遅れてやってきた。昨日、基隆から台北まで乗ったのと同じ型の、韓国DAEWOO製の電車。JRの113系の中古とか、221系とかを売り込んだらどうかね。

 途中、「田中(Tianjhong/ティエンチョン)」とか「追分(Jhuifen/チュイフェン)」なんて駅がある。これっておそらく、日本語の“たなか”や“おいわけ”なんだろうな。台北の郊外にも“汐止(シージー)”とか“板橋(バンチァオ)”という街があるが、これも「しおどめ」「いたばし」っぽいなあ。

 ──夜の通勤通学客に混じってロングシートの電車に座ること小一時間、18時33分、臺中(Taichung/タイチョン)に到着。大正時代の煉瓦づくりの駅舎がライトアップされていた。

台中駅
臺中車站。1917年築。

* * *

Taichung-Taipei 薄暗い窓口に並んで、19時42分発の自强號の切符を買った。臺北まで375元(1,387円)。ここでもやはり一発では言葉が通じず、焦る。ほうほうのていで用を済ませ窓口を去るとき、ぼくの後ろに並んでいた女子中学生が、のんびりと歌うように「兩張到田中!(田中まで二枚)」と窓口に言っていたのが印象的だった。すごくきれいな華語の発音だったのだ。

 夜の台中の街を散歩して、軽く食事をしてから駅に戻る。臺北・松山行きの自强號は数分遅れでやって来た。台北~高雄間の西部幹線は、相当の本数の列車が走る長距離の幹線鉄道で、にもかかわらず特急列車も普通列車も数分程度の遅れで走っているのだから、まずまずだと思う。

台中駅ホーム 自動改札
ホームの様子。/都市近郊には自動改札もある。

警察機関は行政の中立にもとづき、各候補者およびその活動員が当機関において選挙活動に従事することを禁じます。 開往松山 経由山線 自強号 19:42 第1月台 本次車約晩1分
左:ホームにあった鉄道警察の詰所に掲げられていたプレート。お国柄である。
右:「松山行き・山線経由・自強号 19時42分 1番線 この列車は約1分遅れています」

自強号 自强號で臺北へ向かう。列車は比較的空いていて、次の停車駅で降りてしまう人もいたし、途中の新竹(Hsinchu/シンチュー)や桃園(Taoyuan/タオユェン)といった都市の間の客も多い。日本の在来線のエル特急に乗っているような気分。停車する駅の暗いホームと、どぎつい街のネオンを眺めていた。

 臺北到着は21時56分。ホテルまでぶらぶらと歩いて帰る。

ISコーヒー ヴァニラ・ラテ
本日のコーヒー。

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 たった3泊4日だったが、職場の夏休みをもぎ取って半分無理矢理来たようなものだったので、印象は強かった。台北駅の朝のラッシュを見て、田舎に出かけ、帰ってきて、夜の台北を見る。一日はとても長い。ふだん職場で一日ぼくは何をしているんだろう、などと思ってしまい、ちょっと落ち込んでしまったりもしたのだった。

 最終日は、市内のエヴァーリッチ免税店に連れて行かれ(パック旅行の常ですな)、そのまま中正空港へ。帰りの飛行機ではビールを飲んでうとうとしているうちに日本に着いた。映りの悪い座席のパーソナルテレビで、『チャーリーとチョコレート工場』を華語字幕で見ていたのだが、途中1時間弱くらいまでしか覚えていないので、今に至るまでこの映画の結末を知らないのが心残りと言えなくもない(?)。

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時刻表 台湾の鉄道時刻表は日本でも神田の書店街などにいけば入手できますが、臺灣鐵路管理局のサイト火車時刻査詢系統で全列車の時刻を参照できます(要Big5フォント)。画像は、今回の旅行中に台北駅のインフォメーションでもらった、『臺灣鐵路簡易時刻表』です。ごく薄い冊子ですが、台鉄の全路線を網羅しています。「シーコーピァオ(時刻表)」か何か言えばおそらく通じます(?)。

 高速バスについては、『台湾の高速バス事業者リンク集(作者:ASIA BUS CENTERさん)』を事前に参考にしました。

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