site top pagenewest diary<previous page

じゃわじゃわ旅行記
晴れわたる屋久島の空 #02

地図地図
地図地図


屋久島一周 Sep. 21, 2006
安房→尾之間→大川の滝→屋久島灯台→一湊→安房


 翌日はちょっと寝坊。8時半頃に宿を出て、県道沿いのバイクショップに行ってみた。

 実は、縄文杉と白谷雲水峡にそれぞれ1日ずつ使うつもりで来ていたのだが、あっけなく1日で両方歩いてしまったので、今日は予定が空いている。休みで旅行に出かけてまで“予定が空いている”とは、なんとも贅沢な話ではある。

 島の南側〜西側のほうに足を伸ばしたかったので、最初は自転車を借りて島を一周しようかと思ったが、よくよく見てみると屋久島は、一周すると100km以上ある、かなり大きな島なのだ。自転車じゃ、一日じゃ無理っす。──そんなことを考えていたところ、昨夜『散歩亭』のマスターと世間話をしていて、安房の集落にあるレンタバイクのお店を教えてもらったのだった。

 ぼくは普通免許所持者である、一応。ふつうの人ならさっくりと四輪を借りるところだろうが、ぼくは実はゴールド免許でもあることだし、クルマは運転しないことになっている(笑)。旅先で無理してクルマを運転して、事故起こしたら何にもならない。

 しかし、原付なら何とかなるんじゃないか。さらに実は原付だって一度も乗ったことないのだが、最近のバイクって、ほら、スイッチ押せばエンジンかかるらしいじゃん。

 ──てなわけで、まんまと(?)黄色いスクーターを借りました。一日3,500円。ヘルメットも込みです。満タン返しですからね。

黄色いスクーター 島を周回する県道にはいきなりは乗らずに、波止場あたりの車の通らない道路で、ちょっと練習。キー回して、エンジンかけて、グリップ握るとアクセル吹いて、止まって、おしまい。…おお、それだけじゃん。クラッチもないし、なんてラクな乗り物なんだ。(爆)

 時刻は9時10分。調子に乗って、黄色いスクーターに乗って、屋久島一周に出発。法定速度厳守!(^^ 県道はほとんど車が走っていないが、時折速いのが後ろから来ると、すかさず左ウィンカーを出して先に通す。──以後、距離の表記は安房基点で原付のメーターの数字をメモしていたものを基準としています。途中の寄り道とかも含まれてるけどね。

* * *

 安房から10km(約30分)ほどのところに、“屋久島有用植物リサーチパーク”というのがあったので立ち寄ってみた。入園料1,000円。

屋久島有用植物リサーチパーク 

モッチョム岳とトローキの滝 サフランの花

パイナップルの彼方
 まだ午前中早い時間だからかな、誰もいない園内。照りつける陽射しに汗をかく。見晴台からは、モッチョム岳を背景に海に落ち込む“トローキの滝”が。

ハイビスカス この花は?
 青空に真っ赤なハイビスカス。両方あるので南国磐石の構え。(謎)
 右の写真の、低木に紫色の五弁花がつくこの花。なんていう花なのかしら。センダンかと思ったけどちょっと違いますね。集落なんかによく植えてあったのですが。

* * *

JRホテル屋久島 尾之間おのあいだ(17km)という集落に入った。

 JR九州のホテルがそびえ立っている。屋久島でもかなりよい方に属する宿泊施設である。ここのお風呂がよいと聞いて来たので、車寄せの坂を原付でブ〜ンと登ってみた。

 フロントで、「日帰り入浴は…」と尋ねると、「ご利用は午後3時から6時までとなっております」「出直してきます^^」 ──退却っ。

尾之間温泉の公衆浴場 その代わりというわけではないが、集落の中にある素朴な公衆浴場に入った。まだ午前中で、風呂に入る時間じゃないといえばそうなんだけどね。泉質は、弱硫黄泉ってとこかな。かなり熱い湯で、ゆっくりゆっくり入りました。

* * *

 尾之間から10分弱、県道をちょっと逸れたところに、畑の真ん中に小さな教会があり、そのそばにシドッチ神父上陸記念碑が立っている。シドッチとは新井白石の時代に密航してきたイタリア人の宣教師。江戸の茗荷谷で幽閉されたまま死んだ。

こういうところを原付で走る爽快感ときたら! シドッチ上陸記念碑 記念碑の下は、岩礁が海に落ち込む海岸。 牛さんもいます

* * *

平内海中温泉。妙な雰囲気 平内海中温泉(29km)。磯に温泉が沸いており、干潮のときは入浴できるというところなのだが、こんな開放的なところであるのに、「水着禁止」の旨がでかでかと書いてあり、近くの集落のオヤジが見張っている。どうも変な雰囲気である。善意で管理している集落の人には悪いけれど、だいたい、水着禁止でタオルはOKだなんて、温泉の風上にも置けないだろ。カップルとかが来ても、男子のほうが一生懸命パンツ脱いで入ってて、女子のほうが遠巻きにしてる、という感じで、何度も言うが妙な雰囲気であった。

* * *

 栗生くりおという集落をすぎると、いよいよ島の西岸。次の集落まで30kmあまり、人の住まない地域になる。県道はつながっているが、「西部林道」と呼ばれ、大型車は入れないルート。照葉樹林が海岸線に直接落ちる、世界自然遺産地域である。

大川の滝
 その前に、“大川おおこの滝”(44km)。青空の下、滝つぼ近くの岩の上で寝転がって、飛沫を浴びる。

* * *

西部海岸 西部林道

サル!
 西部林道ではシカの親子やサルに出会う。

屋久島灯台
 永田岬の屋久島灯台(62km)に寄り道。このあたりからははるかに口永良部島の島影も見える。

* * *

 大川の滝から1時間半弱走って、ようやく人里が見えてきた。永田(70km)の集落だ。

 そろそろ食事をしたいが、ガイドブックに乗っているお店に行ってみたら準備中だった。まだ燃料には余裕があったが、手持ち無沙汰にガソリンスタンドに寄って、給油してもらいながら、「ごはん食べられるところありませんかね」と聞いてみたが、教えてくれたのはさきほど準備中だったお店。「閉まってましたわ」「この部落ではそこしかないねえ」「そうですか…」

* * *

一湊の漁港 ガジュマル並木

カフェ「ときどき滝が見える」さん
 次の集落は一湊いっそう(82km)。漁港と海水浴場があり、ガジュマルの並木に包まれた小さな集落だった。

 集落のはずれの滝の近くにカフェがあり、ハニートーストで軽食。──店の前にマウンテンバイクを停めてコーヒーを飲んでいる西洋人の2人組がいたが、自転車ではたいへんだと思うぞ〜。

* * *

志戸子ガジュマル園
 原付だと、“ちょっと寄り道”っていうのが自転車よりずっとやりやすいのが嬉しい。なにしろ、地形に左右されないからなあ。──志戸子ガジュマル園(88km)。やぶ蚊だらけなので要注意。

 屋久島最大の集落である宮之浦が近づくにつれ、県道の交通量はだんだん多くなっていった。──これまでのんびり気ままに走ってきたが、そろそろ交通の流れに気を配りながら走らなければならなくなってきた。県道沿いに採石場なども現れ、時折ダンプトラックが通って、原付ではものすごい横風を受ける。ちょっと危ない。

 宮之浦の集落は特に買い物するところもないということが昨日わかっているので素通りし、飛行場(106km)を経て安房まで残りの道のりを突っ走った。途中で土産物屋に寄るのも忘れなかったが。

* * *

 安房(120km)に帰り着き、本日二度目の給油。原付のガソリン代なんて、はっきり言って問題にならないくらいの額で、120kmも走っておなかいっぱいだ。

 夕方17時15分。初めての屋久島だったが、2日間、自分なりの楽しみ方ができたような気がして、満足感があった。──バイクショップにスクーターを返すと、ぼくはすぐに鹿児島商船に電話し、明朝7時に安房港を出る高速艇『トッピー』を予約した。

 ──でも、その夜の『散歩亭』さんでトビウオをさかなにお酒を飲んでいたとき、お店の方から、花之江河はなのえごうという湿原が非常にきれいだと教えてもらって、屋久島にもう一泊しようかとちょっと揺らいだんだけどね。。。(^^; まあ、次に来るときに取っておこう。いつになるかわからないけれど。


補遺
安房港(鹿児島商船『トッピー1』)→鹿児島港北埠頭(鹿児島市営バス)→鹿児島中央(九州新幹線『つばめ』)→新八代(特急『リレーつばめ』)→鳥栖(普通列車)→二日市(西鉄バス)→西鉄二日市(西鉄太宰府線)→太宰府(西鉄太宰府線)→西鉄二日市(西鉄天神大牟田線特急)→西鉄福岡(天神)/天神(福岡市営地下鉄)→博多(寝台特急『はやぶさ』)→横浜


鹿児島中央駅、アミュプラザ 鹿児島中央駅の“みどりの窓口”は、幸いにして空いていた。ここから鉄道で帰京するつもりだが、その前に福岡に寄ろうと思っている。九州なんて滅多に来られないから、行きたいようなところには寄っておこうというつもりである。──しかし博多から新幹線で帰るか、夜行寝台で帰るかはまだ決めていない。どうせなら、寝台特急の『はやぶさ』に、廃止になる前に一度乗っておきたい。

 しかしこの列車、博多発17時37分→東京着9時58分という浮世離れしたダイヤで、博多から乗るには時間が早すぎるのだ。京都行きの“あかつき”で新大阪から新幹線で帰京するのもいいなあ、などと思いつつ、しかし博多に着いたらさっさと帰りたくなるかも知れん。──と言うわけで、博多から新幹線経由で横浜市内までの乗車券を作ってもらった。わざわざ“新幹線経由”と断るのは、新下関〜博多間は新幹線がJR西日本/在来線がJR九州で、運賃が異なるからだ(JR九州のほうが高い)。やっぱり夜行で帰ろうと思ったら、博多で経路変更をかければよい。

 さらに、鳥栖までの自由席特急券も買って、九州新幹線『つばめ』号を初体験した。木材やすだれなどの和装がふんだんに使われた車内は、目新しいが落ち着いた雰囲気ですばらしい。こんなゆったりした列車が東海道新幹線にも走ってくれれば…。

 新八代で在来線特急『リレーつばめ』博多行きに乗り換え。私見だが、新幹線の260km/hよりも、在来線特急の120km/hのほうがスピード感があって楽しい。

『つばめ』、新八代行きだけど名目上は“博多行き”を標榜。 『リレーつばめ』

* * *

 “リレーつばめ”を鳥栖で見送って普通列車に乗り換え、二日市で下車。

 目的地は太宰府である。天満宮と、去年開館した九州国立博物館に行こうと思っている。屋久島を堪能したあとで、まっすぐ帰ろうかとも思って迷ったのだが、九州なんて滅多に来られないところだし、太宰府は基本的には福岡の郊外で交通も便利なところだから、寄ってみることにした。(史跡の都府楼跡はちょっと離れてるので寄らなかった。)

 しかしJR鹿児島本線は太宰府を通らない。太宰府は鉄道で行くなら西日本鉄道(西鉄)である。なら大牟田で西鉄に乗り換えちゃえば話が早いかと言えばそうでもなく、西鉄でも本線ではなく西鉄二日市ふつかいちから出る支線である。そんなわけでJRの二日市駅に降り立ち、バスで西鉄二日市駅に移動し(距離的にはすぐだったのだが市街を循環するバスの乗った方向が悪くて15分くらいかかっちゃったよ)、西鉄電車で太宰府に到着。

太宰府天満宮 太宰府天満宮

 天満宮で菅原さんに、今回の旅行の無事を感謝し、梅の実のお守りをいただいてから、九州国立博物館へ。天満宮の隣の丘の上にある博物館へは、巨大シェルターのようなエスカレータと動く歩道が通じている。

国立博物館へ、山をぶち抜くトンネル エスカレータはシ社製

非常に斬新な建物だが、大きすぎてどうやっても全体が入らない

 昨年開館したばかりの九州国立博物館は、いまは“文化交流展”=常設展しかやっていなかったが、これが縄文の矢じりからハニワ、仏像、東アジア各国の磁器などなど、盛りだくさんの展示で、これだけでも2時間くらいはいける。福岡に行く機会があるかたには、ぜひお奨めしたいところだ。

 駅に戻って、西鉄で福岡へ。二日市で特急に乗り換えて、20分あまりだった。鹿児島中央からのJRの乗車券は二日市で途中下車して博多まで放棄でいいや。──福岡って地理勘が全然ないのだが、那珂川を基準にするとJRの博多駅が川の東側にあるのに対して、西鉄の福岡駅は西側。『西鉄福岡(天神)』というのが正式駅名らしい。天神からJR博多駅までは地下鉄で5分。

* * *

 博多駅に着いたのが16時半頃。ここに至って行程の最後を決めた。“みどりの窓口”へ行き、「今日の『はやぶさ』のB個室、横浜まで。なければB寝台で」と一声かけた。B個室は満室だったがB寝台はあっさり下段が取れた。

 同時に、新幹線経由で買った鹿児島中央→横浜市内の乗車券を出して、在来線経由に変更してくださいと言ったら、もう使い始めている乗車券の変更はできません、などと言う。だから区間変更をしてほしいと言ってるんだ、と強調したら(鹿児島中央で入場してることは券面を見ればわかるのだから、この状況で乗車変更をしようとするわけがないじゃないか)、区間変更券は精算所でしか発行しない、と渋り始めたので、ちょっと呆れてしまった。みどりの窓口が払い戻しや区間変更、乗車変更などを扱わないとは聞いたことがない。

 唖然としていると、窓口の駅員は原券を持って引っ込んで行き、しばらくして区間変更券を持ってきた。博多駅改札発行、博多〜小倉間で追加額が140円。小倉まで? 新下関までじゃないのか、と思ったが、現地の駅員がこれでいいと言うのだからいいのだろう。国鉄分割の弊害だよな、これ。──しかし、旅行開始後の経路変更は、以前にもJR西日本の黒部駅で大いにもめたことがあるので(このときは北越急行線がらみだったので、区間変更はできないという結論だったが──これもよく考えてみると変な話なんだけどね、通過連絡運輸をしてるくせに)、なるべくやりたくはないのだけれど、最初から何もかも決めて旅行するだけが能じゃないだろう、と思うのは少数派なのかな。

 筑紫口を出たところのコンビニで食糧と酒を買い込み、スターバックスでラテを飲んだら、なんだか久しぶりに都会に戻ってきたような気になった。いよいよ『はやぶさ』に乗り込む。

寝台特急『はやぶさ』@博多駅 『はやぶさ』は、ぼくが子供の頃は東京と西鹿児島の間を走る、日本でいちばん長距離の列車で、宮崎行きの『富士』がそれに続いていた。当時は他にも、長崎・佐世保行きの『さくら』、長崎・熊本行きの『みずほ』、博多行きの『あさかぜ』があって、九州行きブルートレインはたいへん賑やかだったのだが、いまでは『はやぶさ』が熊本止まり、『富士』が大分止まりで残っているのみ、しかも門司で分割併合して一本の列車になる。

 『はやぶさ』単独で走っている小倉〜熊本間は、A個室・B個室・A寝台・B寝台とひととおりそろってはいるものの、たったの6両編成だ。食堂車はもちろん、シャワーやロビーカーなどの定員外の設備は皆無で、車内販売さえ乗務していない(上り列車は、夜が明けた浜松から販売員が乗り込んでくるが)。──長い夜、博多で買った駅弁を食べ、お酒を飲みながら向かいの寝台のオヤジとしゃべったり寝転んで本を読んだりしているうちに、眠ってしまった。■

夕闇を見送る鉄路

<previous page


site top pagenewest diary

inserted by FC2 system